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公開シンポジウムⅡ「心を豊かにする関係性」

このシンポジウムでは、“普通”の人の心を理解する視点から、個人が疎外される心理と人間関係、そしてその心を癒して豊かにする人間関係について、 異なった立場の方からお話を伺います。文化人類学の視点からは上田氏に、心の捉え方と生きることの豊かさを語っていただきます。 また、岸本氏には、現代の多様化する価値観と生き方など、関心を持たれていることや疑問についてお話いただきます。 下山氏には臨床心理学の立場から、心がどのように傷つき、癒されるかについてお話をいただきます。

シンポジスト: 司会:

シンポジストからのメッセージ

私が20年前に日本社会の「癒し」を主張しはじめたとき、 それはまさに「心を豊かにする関係性」への提言でした。しかし、その後「癒し」はブームの中で「関係性」の部分をどんどん失っていきました。 その後の新自由主義の嵐は、効率性と自己責任の名の下で、ますます「かけがえのない関係性」を切り捨てています。 その中で、私たちはどこに真の豊かさを求められるのか。「生きる意味」の取り戻し、互いに自己成長できる場作り、対談させていただいたダライ・ラマの思想等にも触れながら、考えてみたいと思います。               

上田紀行

【略歴】
東京大学大学院文化人類学専攻博士課程修了。 東京工業大学大学院准教授。近書、『生きる意味』(岩波新書)のほか、 『かけがえのない人間』(講談社現代新書)、『目覚めよ仏教!―ダライ・ラマとの対話』(NHKブックス)、 『がんばれ仏教!―お寺ルネサンスの時代』(NHKブックス)、『日本型システムの終焉』(法蔵館)、 『宗教クライシス』(岩波書店)、『覚醒のネットワーク』(カタツムリ社)など著書多数。

 

人間関係が希薄な時代といわれます。周囲と関わりを持たず、 携帯電話やゲーム機を操作する姿にそう感じます。一方、スピリチュアルブームという現象があります。 社会における従来の紐帯やセーフティネットが機能しにくくなり、 人々がそれに代わる関係(例えば、自分を支えてくれる、何か超越的な存在とのつながり)を求めているのかもしれません。 心の時代ともいわれます。ただしそれは、さまざまな出来事を個人の心の問題に還元してしまう危うさもはらみます。 真に心を豊かにする関係性は何か、皆さんと共に考えます。

岸本葉子

【略歴】
東京大学卒業。エッセイスト。旅にまつわるエッセイで活躍する一方、 身辺エッセイでも人気を得る。2001年虫垂がんの手術を体験、以後、病気や健康、 および心のありように関心をもち、がん患者サポート活動にも携わる。 2007年、同年代のがん体験者数人と「希望の言葉を贈りあおう」というプロジェクトを始める。 主な著書は、『がんと心』(文春文庫)、『病を超えて いのちの対話』『わたしを超えて いのちの往復書簡』(共に中央公論新社)など。

 

私の専門は、臨床心理学です。今回のテーマ「心を豊かにする関係性」については、 裏側からアプローチしたいと思います。正直、私は、このような内容のテーマには最も似つかわしくない人間です。 というのは、私の仕事は、人の不幸を食い物にする“やくざ”な稼業だからです。 ところが、このような仕事が最近流行っています。そこで、なぜ、このような仕事や学問が流行るのかということから、 今回のテーマを考えてみようと思います。

下山晴彦

【略歴】
東京大学大学院教育学研究科修了。教育学博士。1983年から東大教育学部助手、 1991年東京工業大学講師を経て、2004年東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース教授。 主な著書は、『テキスト臨床心理学全5巻』(編訳)、『物語りとしての心理療法』(監訳)(共に誠信書房)など。
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