ホーム > 日程表 > 公開シンポジウムⅠ「援助活動の様々な形-こころのつながりを求めて-」

公開シンポジウムⅠ「援助活動の様々な形-こころのつながりを求めて-」

東京都清瀬市近辺には多くの医療施設があり、そこでは様々な職種のスタッフが患者さんと交流し、援助活動を行っています。 精神科ソーシャルワーカーとして長く勤められた古屋氏、ハンセン病と精神科病棟で看護に携われた関屋氏、 精神科クリニックで地域に溶け込む金杉氏、また、自殺予防に取り組んでこられた福山氏に、それぞれの経験に基づく「心の交流」についてお話いただきます。

シンポジスト: 司会:

シンポジストからのメッセージ

「長期在院精神障害者の退院支援~退院患者さんが教えてくれたこと~」

日本は世界一、精神科の病院が多い国で、精神科ベッド数の多さは、諸外国と比べても飛び抜けています。 そして、そこには世界一多い入院患者さんたちがいます。 他に類を見ない、超長期にわたって入院をしている患者さんたちです。
日本は、精神病の患者さんが多いのでしょうか? 日本は、重症の入院患者さんが多いのでしょうか? そんなことはありません。では、なぜ、精神科に長期に入院している患者さんが多いのでしょう? なぜ患者さんたちは、退院できないのでしょう?
病院はふつう、入院したら退院するところです。ふつうでないのは、患者さんたちでしょうか? それとも、この日本という社会でしょうか?
退院した患者さんたちが、ソーシャルワーカーの私に教えてくれたことを、皆さんにお伝えしたいと思います。

古屋 龍太

【略歴】
和光大学人文学部人間関係学科卒業。 1982年より国立精神・神経センター武蔵病院(旧国立武蔵療養所)で 26年間にわたり精神科ソーシャルワーカー(精神保健福祉士)として勤務。 2008年より日本社会事業大学専門職大学院の准教授に。 著書として『精神障害者のケアマネジメント』(へるす出版)、 『臨床に役立つ精神保健福祉』(弘文堂)、『精神科リハビリテーション学』(中央法規)、 『精神科リハビリテーション看護』(中山書店)など(いずれも共著・分担執筆)。

 

「ハンセン病看護・精神科看護に携わって」

 ハンセン病の患者は、かつては国策としての絶対隔離(すべての患者の終生隔離)を強いられていました。 それは実際上〈社会的死〉とも言えます。しかし、療養所の中で接する患者様から受ける印象は、 泣くのも、笑うのも、苦しむのも、喜ぶのも、私たち同様でかわりはありませんでした。 それでも、様々な断絶を悔む思いが、何かにつけて頭をもたげてくると思います。 ことに自ら死を覚った人の奥深い心のうちは、はかり知れない悩みや悲しみに満ちていると思います。
何もしてさしあげられないと、ただじっと手を握っているとき、インドの「死を待つ人の家」のマザーテレサの 話をよく思い出します。また、マーガレットミードの、「いつのとき、どこの場であろうとも、 思いやりといたわりだけは失ってはならない」という戒めを思い出します。本当の看護の意味は、 このあたりにあるのではないかと思います。

関屋スミ子

【略歴】
  昭和47年より、ハンセン病療養所多磨全生園に勤める。 その後、昭和60年から全生園付属看護学校教官になる。 この間毎年卒業旅行に学生をインドのマザーテレサの施設にボランテァに連れてゆく。 平成6年から、国立精神・神経センター国府台病院、児童精神科病棟に勤務し、 摂食障害、不登校児の看護に携わる。平成13年から、国立療養所犀潟病院、 民間の精神病院勤務を経て、平成20年より、 横浜カメリアホスピタルの児童思春期ストレスケア病棟ジェネラルマネージャー。

 

「いのちの電話相談員の力」

35年間「東京いのちの電話」の研修に関わり現在に至っているが、この間のボランティア相談員(以下相談員)とのかかわりからいくつかのことについて報告させていただきます。
  1. 相談員の学習は広義の「社会教育」と位置づけられ、コミュニティにおける「ピアサポート」の担い手として成長している。
  2. 温かく、丁寧な電話でのかかわりがコミュニティの人々を元気づけ、支えている。
  3. 健康的で感性豊かで、対話技法的には未熟でも真剣なかかわりができる人たちである。
  4. 特に「自殺」問題への関心や精神衛生問題への関心がとても高い。
  5.  
使命や連帯感に裏打ちされて地道な活動を継続していくことで、個々人の成長とコミュニティの成熟に貢献していくものと理解しています。

福山清蔵

【略歴】
立教大学大学院教育学専攻修士課程終了。東京都児童相談センター、日本女子大学児童研究所を経て、現在立教大学コミュニティ福祉学部教授。『東京いのちの電話』研修担当。主な著書に『カウンセリング学習のためのワークブック』『電話相談の実際』など多数。現在の研究テーマは、韓国と日本の自殺問題、自殺遺族ケアとそのサポート体制。

 

「クリニックで出来る地域精神医療」

 15年間で3つの精神科病院に勤めた後、 住宅地の駅前で精神科クリニックを始めて12年目になります。 半径2kmぐらいに住む人たちに必要な精神医療を提供するというコンセプトで、 通院精神療法、薬物療法、精神科デイケア、訪問看護、心理カウンセリング、 精神保健福祉相談、服薬指導などを行っています。始めてみて気づいたことは、 地域で暮らす多くの人たちが実に多様な心の治療のニーズを持っていること、 悩み苦しみを聴いてほしい人が多いこと、援助を続けるには医療、保健、福祉、 その他の分野の人たちと連携が必要だが、連携して頼りになる相手が地域には大勢いることでした。 患者さんと同じ時代同じ社会を生きて、地域の人々と助け合って治療する町医者の精神医療だと思っています。

金杉和夫

【略歴】
1951年東京生まれ。69年一橋大学社会学部入学、74年卒業後、国分寺市福祉事務所に勤務。77年東京医科歯科大学医学部入学、83年卒業後、精神科医として国立武蔵療養所(現在の国立精神神経センター病院)、陽和病院(練馬区)、長谷川病院(三鷹市)に勤務した。1998年4月に練馬区大泉でクリニックを開業し、現在に至る。
Psilocybe :)